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[第1回くらしと法律セミナー]お墓と法律問題

弁護士 北 上 紘 生
2014年3月9日(日)
13時30分から15時30分
静岡県産業経済会館

第1 自己紹介

出身は静岡県の焼津市です。静岡県立藤枝東高等学校を卒業した後,金沢大学法学部に進学しました。大学4年時に静岡大学法科大学院の入学試験を受けて合格しました。大学卒業と同時に横浜市鶴見区にある大本山總持寺で1年間修行してきました。静岡大学法科大学院については1年時に休学しました。
静岡大学法科大学院卒業後,司法試験に合格しました。司法試験合格後,福島県で司法修習をしました。司法修習修了後,弁護士法人鷹匠法律事務所に入所し,今に至っています。

第2 お墓の承継の法的な話

お墓についての民法の規定としては民法897条1項が挙げられます。民法897条1項によれば,系譜,祭具及び墳墓の所有権は,慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する,ただし,被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは,その者が承継する,という趣旨の規定となっています。また,2項には,慣習が明らかでないときは,家庭裁判所が定める,と規定されています。墳墓というのがお墓ということになります。
すると,民法上,お墓の承継についての順番というのは,①亡くなった人の指定,②慣習,③家庭裁判所の審判ということになります。従って,相続とは別の問題ということになります。長男が墓を継がなければいけないわけではありません。喪主が墓を継がなければならないわけでもありません。
相続とは違うという話については,以下のような例をとるとわかりやすいと思います。A(女)とB(男)は婚姻し,やがて,2人の間にはCが誕生しました。しかし,AとBは離婚し,親権はAが取得し,CはAの旧姓を名乗ることとし,Aと生活してきました。Bは養育費もはらわず,離婚後,BとCとの接点はほとんどなくなりました。その後,Bが死亡しました。Bには兄のDがいました。この場合,Bの相続人は子どものCということになります。兄のDはCがいるために,Cが相続放棄などをしない限り相続人とはなりません。では,Bのために墓を建てて今後の供養をするのは誰になるのでしょうか。この場合,生前から接点のなかったCよりは兄弟であるDが今後の供養を行うと判断される可能性があります。しかし,Dさんからすると,相続財産はもらえないのに,お墓の面倒を見なければならないということで不満が出てくる可能性があります。

第3 墓地の分類についてのお話

お墓の種類は大きく3つにわけることができます。公営墓地,寺院墓地,民営墓地です。墓埋法と通達により,地方公共団体が運営主体の原則,それ以外は宗教法人,公益法人に限られています。そうなると,公営墓地と寺院墓地に限られることになります。しかし,現実の社会においては,形式上は宗教法人が経営し,実質上の経営者は石材業者などになっている場合があります。これを便宜上民営墓地と呼ぶこととします。
公営墓地は地方公共団体が運営しているということで,経営が安定しています。また,維持管理費についても安いところが多いと思われます。もっとも,お墓を買うとしても,倍率が高く購入が困難なことがあります。
寺院墓地は宗教法人が管理をしています。もっとも,寺院で墓地を購入する場合,檀信徒になることが条件となることが多いです。檀信徒となると,年忌法要の実施,布施,本堂の修理などによる出費等がかかります。宗派不問という場合もありますが,仏教限定などの制限がある場合があります。
民営墓地は,広告等で宣伝をしていることが多いです。この民営墓地ですが,実質的経営者として石材業者などが行っている場合があることは既に述べたとおりです。譲渡禁止,墓石業者の指定,墓の設立の期間制限,外柵を付けることなどの制約がついている場合があります。

第4 将来自分の家の「お墓」を守る人がいないのでどうすればよいか

お墓を守る人がいない。これは今後少子高齢化社会が進んでいくと避けられない問題です。近年は,寺院墓地も永代供養を整備している所が多くなってきていると思います。寺院としても,墓地を買ってくれた檀家さんに跡取りがいない,檀家さんの娘さんは皆嫁いでしまったなどの相談は檀家さんから寄せられていると思います。墓地継承の問題は今後避けては通れない問題ではないかと思います。
仮に,墓地を守ってくれる人がいないとなった場合,様々な問題が起こります。まず,そのお墓の手入れが行き届かなくなってしまいます。寺院としても,更地にして新しい人に墓地を分譲したいという思いがあります。そこで,各寺院が永代供養に対応している寺院が多いです。
すでに寺院にお墓を持っている場合には,遠慮せずに住職に相談することをお勧めします。
お墓を持っていない人でも,永代供養を受け付けてくれる寺院はあると思います。お近くの寺院などに相談してみてください。
永代供養といっても,多くの寺院の場合,永代供養塔や永代供養墓など,永代供養専用の墓などが備えられています。そこに,他の永代供養として埋葬されている遺骨と一緒に保管されることになることが多いのではないかと思います。

第5 田舎の「お墓」を今住んでいる所にもっていきたいが,どうすればよいか

お墓を移したい。お墓のお引越しという問題です。お墓が遠いとお墓参りをすることが大変になることも多いと思います。実家を出てそのまま他県で働くことになり,家族などができたりすると,実家のお墓を管理することが難しくなってくると考える人もいると思います。
お墓を移す場合の手続きについてお話しします。
墓埋法については,改葬ということで規定があります。「改葬」とは墓を移転することをいいます。
「改葬とは,埋葬した死体を他の墳墓に移し,又は埋蔵,若しくは収蔵した遺骨を,他の墳墓又は納骨堂に移すことをいう」(2条3項)と規定されています。そして,改葬については現に遺骨がある市町村長の許可を受けなければなりません(同法5条1項,2項)と規定されています。
改葬手続きのためには2つの書類が必要です。
1つは埋蔵証明書です。これは現在の墓地の管理者が発行します。これが必要な理由は他人の遺骨ではないことを確認するためです。
2つは受入許可書です。これは移転先の墓の管理者が発行します。移転先の墓が決まっていればその墓地の管理者が発行してくれます。
この2つの書類を遺骨が保管されている墓地のある市町村の役場に行きます。市町村が改葬許可書を発行してくれます。もっとも,改葬許可書を発行することについての対応は自治体によって微妙に異なります。詳しくは市役所に確認してください。もっとも,移転先の墓が決まっていない場合,自治体の対応が2つに分かれるようです。
対応の一つは,行先が未定でも改葬許可を出すという対応です。もう一つは,移転先が未定の場合,改葬許可は出せないという対応です。
正しい見解は前者です。行先が未定でも改葬許可を出すことは可能です。埋蔵している遺骨を自宅で保管する場合には,改葬許可は不要となります。
受入先のお墓が決まってなくてもお墓を移すことができます。場合によっては自宅で保管することもできます。
費用ですが,墓の撤去,処分,整地などでお金がかかると思います。寺院にある墓地について移動する場合には,閉眼供養,魂抜き,離檀料などがかかることがあります。
自宅で保管することについては,法律上特に禁止をしている規定はありません。自宅で遺骨を管理することも可能です。かつて女優の沢村貞子さんは夫の遺骨を保管していたようです。
お墓を移すといっても,先に新しいお墓を購入していなければいけないというわけではありません。

第6 お墓に関するその他のこと

1 戒名について

戒名とは,仏弟子になった証に授けられる名前のことです。死後につけられるものとは限りません。生前に仏弟子になれば戒名を与えられます。
仏教においては,生前に戒名を受けることができる行事があります。これを「授戒会」(じゅかいえ)と呼んでいます。私が修行していた横浜市の鶴見にある大本山總持寺では,毎年4月に行われています。
戒名をつけてもらう場合に,名前の漢字一字を利用する場合があります。また,戒名をつけるといっても,生前の実績,人格をほうふつさせるものを入れるべきであるとして,名前をつけるときには慎重になる僧侶の方が多いと思います。

2 お墓の購入について

お墓は自分だけでなく,配偶者や子ども,孫などが入ることもあり得るものです。つまり,家を買うのと同じくらい一生ものの買い物ということです。
先祖代々の墓があり自らもそこに入ることができる場合,そのままその墓を守り続けるか,新しいところを探すかは最終的には家族内で相談して決めた方がいいのではないかと思います。
これからお墓を探すという人の場合,急いで買うのではなく,墓地の場所や使用規則,石材業者などをよく調べて慎重に選んだ方がいいのではないかと思います。もっとも,どれがいい業者かはわからないこともあるかと思います。仮に,実家のお墓は長男が入ることになっているので,次男の私はお墓を探しているというような場合,実家のある寺院にもう1区画分譲を求めるということもありえると思います。仮に,実家のある寺院が分譲できないとなった場合,分譲できる寺院を紹介してくれるかもしれません。

以上

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