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[第5回くらしと法律セミナー]交通事故をめぐる法律問題

 

 

弁護士 大橋昭夫
第5回 くらしと法律セミナー
2014年7月20日(日)
午後1時30分~3時30分

 

2014年7月20日、静岡交通ビルにおいて、第5回鷹匠法律事務所「くらしと法律セミナー」が開催されました。

「交通事故被害をめぐる法律問題」をテーマに大橋昭夫弁護士が損害保険会社が訴訟外の和解において裁判所基準に従っておらず、ひどい場合には自賠責基準で損害賠償額の提示をしていること、さらに、後遺障害の等級認定実務における静岡自賠責損害調査事務所の調査手法の問題点について約3時間にわたって詳細にお話ししました。

定員30名を上回る40名の参加者があり、全員、熱心に聞いていました。

当日の講演要旨を掲載しますので参考にして下さい。

1.静岡県内の交通事故

(1)静岡県内で2013年に発生した事故の件数は静岡県警の調べによると3万5224件である。
2012年の3万6946件からすると、1722件程減っているが、まだまだその数は多い。

(2)2013年に発生した事故の内、184名が死亡し、4万5654名が負傷している。
毎年、県民のかなりの人々が、交通事故に遭遇していることになり、交通事故被害をめぐる法律問題は、県民にとって欠かせない課題となっている。

(3)本日は、このように県民の共通の課題となっている交通事故について被害者救済の視点からその問題点を赤裸々にお話ししたい。

 

2.交通事故訴訟の現状

(1)民事訴訟の総数は全国的に減少しているが、民事交通訴訟の件数は増加している。

(2)2013年には静岡地方裁判所本庁に145件、沼津支部に62件、浜松支部に102件、富士支部に33件、下田支部に1件、掛川支部に7件、合計350件が新規に申立てられた。
2012年には合計304件、2011年には合計219件であったので、静岡県でも民事交通訴訟の増加傾向は顕著である。

(3)ちなみに全国をみると、2011年が9598件、2012年が1万1302件、2013年が1万2218件となっている。
2013年に静岡地方裁判所に提起された民事交通訴訟の件数は350件であるので、静岡地方裁判所は全国の地方裁判所で2013年に受付けられた1万2218件の約3%を占めることになるが、静岡県内で発生している事故の多さを考えると、まだまだ訴訟の提起件数は少ない。

 

3.交通事故訴訟増加の要因、その1

(1)損害保険会社の提示する損害賠償額が低額であること
損害保険会社は各地の裁判所が言い渡した判決(いわゆる判例)の基準に従っていない。

各地の裁判所の判例は、公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部によってまとめられ、「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」として毎年2月に最新刊が発刊されている。

これは裁判所基準であるが、表紙が赤いので「赤本」と呼ばれ、静岡地方裁判所を始めとして全国の裁判所がこの基準をもとに和解勧告をしたり、判決の言い渡しをしている。

この基準は判例法理に基づくものであり法律と同じく実質的な規範性(社会における解決の定め)を有しているものであり、加害者を実質的に代理する損害保険会社も拘束されるはずである。

(2)しかし、損害保険会社は、赤本(裁判所基準)によらず自分の会社の定めた基準(社内基準)、ひどい場合には自賠責基準で被害者に対し、損害賠償額を提示しているのが現状である。

(3)自動車損害賠償保障法第16条の3により、金融庁・国土交通省告示第1号として「自動車賠償責任保険の保険金等及び自動車賠償共済の共済金等の支払基準」が制定され、自賠責保険はこれをもとにして被害者の損害賠償額を算定し、自賠責保険金の支払をしている。

この「自賠責保険金、共済金支払基準」は、あくまでも強制保険によって、被害者に対し、最低限の損害額の補償をするという社会保障的性格を有するものであって、これが被害者に対する適正な損害賠償額に代替しうるものではない。

(4)このことを損害保険会社も十分知っているにもかかわらず、市民から集めた任意保険のお金を、1円でも多く、自社の内部に保持しておくため、つまり、利潤を社内に確保する目的で、法律とも言える裁判所基準を無視して、低額な損害賠償額を被害者に提示しているのである。

(5)「自賠責保険金、共済金支払基準」の主たる損害項目の認定基準額は次のとおりである。
①入院中の雑費   1日につき1100円
②休業損害   1日につき原則として5700円
但し証拠によってこれ以上の収入が認められる場合は1日につき1万9000円を限度としてみとめられる。
③傷害の慰謝料  1日につき4200円
④後遺障害の慰謝料
 1級1100万円、2級958万円、3級829万円、
4級712万円、 5級599万円、6級498万円、
7級409万円、 8級324万円、9級245万円、
10級187万円、11級135万円、12級93万円、
13級57万円、 14級32万円
⑤死亡本人の慰謝料 350万円
⑥遺族の慰謝料

慰謝料の請求権者は、被害者の父母(養父母を含む。)、配偶者及び子(養子、認知した子及び胎児を含む。)とし、その額は、請求権者1人の場合には550万円とし、2人の場合には650万円とし、3人以上の場合には750万円とする。

なお、被害者に被扶養者がいるときは、上記金額に200万円を加算する。

(6)これに対し、裁判所基準は次のとおりとなっている。
①入院中の雑費
1日につき1500円
②休業損害
事故前の収入を基礎として受傷によって休業したことによる現実の収入減。
主婦等の家事従事者の場合は賃金センサスの女性労働者の平均年収(2012年の最新統計の額は354万7200円)をもとに受傷のため家事労働ができなかった日数を損害賠償額の対象とするので1日につき5700円よりも多くなる。(2012年の場合、1日につき約9718円)
③傷害の慰謝料
むち打ち症とその他の傷害とでは異なるが、その他の傷害
では通院期間が1か月で28万円、2か月で52万円、12か月で154万円、むち打ち症では通院期間が1か月で19万円、2か月で36万円、12か月で119万円となっており、1日につき4200円をはるかに上回る。
④後遺障害の慰謝料
1級2800万円、2級2370万円、3級1990万円、
4級1670万円、5級1400万円、6級1180万円、
7級1000万円、8級 830万円、9級 690万円、
10級550万円、11級420万円、12級290万円、
13級180万円、14級110万円
⑤死亡慰謝料
一家の支柱2800万円、母親、配偶者2400万円、その他2000万円から2200万円で、これは原則的に死亡者本人と遺族の合算額である。

このように裁判所基準は、自賠責基準をはるかに上回っている。

(7)多くの交通事故被害者は適正な損害賠償額基準を知らず、損害保険会社が提示した額を受け入れているのが現状であり、弁護士等にたどりついた者だけが、損害保険会社の提示した額が低額なのに気づき訴訟をしているものである。

今後、裁判所基準の存在が世の中に普及すれば、もっともっと訴訟は増加するであろう。

後遺障害の自賠責保険金は、
1級4000万円(別表第1)、3000万円(別表第2)
2級3000万円(別表第1)、2590万円(別表第2)
3級2219万円、4級1889万円、5級1574万円、
6級1296万円、7級1051万円、8級819万円、
9級616万円、10級461万円、11級331万円、
12級224万円、13級139万円、14級75万円となっており、等級が認定されれば、この額が自賠責保険金から自動的に支払われることになる。

損害保険会社はこの自賠責後遺障害保険金額そのものを後遺障害の損害賠償額(後遺症による逸失利益、後遺障害の慰謝料)として提示してくることも多い。

知識のない被害者は、特に上位等級の場合、保険金額が高額であることもあって、この提示額を適正なものであると思い込んでしまうことがあるので注意を要する。

これは、あまりにも不条理な話しではあるが、現実的に起こっていることである。

 

4.交通事故訴訟増加の要因、その2

(1)静岡県警の調査によると2013年に発生した静岡県内の車両対車両の交通事故のうち、追突が38.4%、出合頭の衝突が26.4%という比率であり、何と2つあわせると64.8%にもなる。

そして、このように交通事故に遭遇した多くの被害者が外傷性頚部症候群(むち打ち症)外傷性頚椎椎間板ヘルニアに罹患し苦しんでいる。

(2)損害保険会社は交通事故の被害者の大半がむち打ち症事案であることに鑑み、長期間、治療を継続させれば多額な保険金の支払いを余儀なくされ、さらに慰謝料の額もかさむことから、むち打ち症は2か月で完治するという俗説のもとに、早ければ2か月ないし3か月程度で、治療を打ち切って欲しいと強要してくる。

治療期間が6か月にもなれば、主治医にも圧力をかけ、治療費の打ち切りをすることが多い。

圧力に強い医師はこれに抵抗してくれるが、多くの医師は損害保険会社から治療費の支払をしてもらっていることもあり、この圧力に抵抗できず、治療の必要があるのに、「これ以上治療の必要はない。」として症状固定にしてしまうことが多い。

平林洌元慶応大学医学部教授が委員長を努める「むち打ち損傷研究会」は損害保険会社が1991年6月1日から8月2日までの63日間に発生し受理したむち打ち損傷事案1000例について分析研究し、むち打ち症被害者の平均治癒期間は73.5日で中央値は49日、70%の者が3か月以内に治癒しているとの報告をした。

以後、損害保険会社はこの報告を金科玉条にし、上記俗説を打ち立て、被害者や医師に圧力をかけるのである。

3か月で治癒する者もいることも否定できないが6か月以上の治療を要する者もいるのであるから、ほぼ一律に6か月で治療打ち切りを求める損害保険会社の態度には大いに問題がある。

(3)レントゲンはどの医師も撮影するが、MRIを撮影していない医師も多く、このような医師が作成する自賠責後遺障害診断書の記載は不十分なものが多いのが現状で、むち打ち症の被害者で後遺障害等級非該当になる者も多い。

(4)1級から14級まである自賠責後遺障害の等級認定は「損害保険料率算出団体に関する法律」によって設立された損害保険料率算出機構自賠責損害調査事務所が担当しており、静岡県内の事故は、静岡市駿河区森下町1の35、MYタワー7階にある静岡自賠責損害調査事務所が担当している。

(5)静岡自賠責損害調査事務所の調査は書面審査が原則で、被害者と直接面談し、被害状況等を確認する事をしていない。

但し、醜状障害については、例外的に被害者と面談し醜状痕の形状を確認している。
直接面談しないので、後遺障害診断書の記載内容が重要になってくる。

静岡自賠責損害調査事務所は、診断書に記載のない事項以外の症状はないものとして取り扱うので、被害者にある後遺障害の内容は余すところなく記載してもらう必要がある。

等級の認定は、原則として労働者災害補償保険における「障害等級認定基準」に準拠して行われるが、後遺障害診断書から直ちに等級の認定が困難な場合、医師への照会や指定医での再診断の受診を要請するものとされているが、指定医での再診断などはほとんど実施されていない。

医師への照会は実施されるものの、医師の記載内容が簡単なこともあり、プラス評価がされることは少なく、マイナス評価の方が多い気がする。

静岡自賠責損害調査事務所は、医学的専門知識を要する場合は、顧問医師への相談を実施し、被害者の適正な保護を図るための調査を行うとしているが、顧問医師がどの病院の誰なのか、その顧問医師の経歴はいかなるものか、全く透明になっておらず、かえって顧問医師への相談は、被害者の後遺障害を切り捨てる方向で事実上機能しているものではないかとの危惧を有している。

(6)いったん、後遺障害の等級が非該当や、低位等級に認定されると、これを覆すことはなかなか困難である。

損害保険会社に異議の申立てをしても異議が認められる可能性は、せいぜい10%以下であると思われる。

裁判官も、この静岡自賠責損害調査事務所の後遺障害等級の認定を重視しており、なかには公的な判断と考えているのではないかと思っている裁判官も少なからず存在する。

損害保険料率算出機構は、2013年4月1日から2014年3月31日までの1年間に自賠責保険金から222億5946万5000円を得て、さらに会員の損害保険会社から32億720万円の資金を得て、運営されている。

このように損害保険料率算出機構には、損害保険会社の資金が投入されており、被害者側弁護士の視点からすると、損害保険会社寄りの調査、もっといえば、被害者側に厳しい調査を行っているのではないかと思われるが、そのように考えていない裁判官も多数存在するので、頭が痛い。

(7)むち打ち症事案の場合、MRIにヘルニア等の変性所見を出ていれば裁判所での鑑定で、非該当を14級もしくは12級に、14級を12級にあげることは、経験的に可能であるが、最近では交通事故訴訟が増加し、鑑定人を確保することの難しさを表向きの理由として鑑定申請を採用しない裁判官も数多く存在する。

この場合、医師による意見書が必要であるが、これに協力してくれる医師の確保が難しく、本来ならば勝てる裁判も勝てなくなるという事態も発生する。

他方、損害保険会社は、顧問医師を確保しており、この医師に意見書の作成を依頼し、被害者の後遺障害の程度を薄めたり、又は、その存在を否定したりするのが現状である。

このように損害保険会社と被害者の力の差は歴然としており、ここを如何に裁判所に理解してもらうか、又被害者のために働いてくれる医師を1人でも多く獲得することが今後の課題になっている。

(8)いずれにしても後遺障害をめぐる静岡自賠責損害調査事務所の認定は被害の実相に合致した結果になっていると思われず、被害者にとって厳しいものである。

被害回復のための最後の砦となるのは裁判所であって、静岡自賠責損害調査事務所の認定が厳しい現状では今後も益々民事交通訴訟は増加していくであろうし、被害者の泣き寝入りを防止するためにもむしろ増加させなければならない。

 

5.交通事故訴訟増加の要因、その3

(1)今、当事務所に相談に来る80%位の人が、自分の加入している自動車任意保険に弁護士費用特約を付保している。

弁護士費用特約がついていれば300万円までの訴訟費用と10万円までの法律相談費用が保険金で賄うことができる。

弁護士費用は高次脳機能障害等の高額訴訟を除き、ほぼこの保険で賄うことができるし、50万円から100万円と高額な鑑定費用もこれで賄うことができる。

この弁護士費用特約付保険は、間違いなく民事交通訴訟の増加に大きく寄与しているもので、弁護士費用他鑑定費用の負担を考えずに訴訟を進行させることが可能になるということで大きな利点を有している。

(2)しかし、この反動もあり、静岡県内ではまだ見られないが、他県では、「損害保険会社の認める弁護士でなければ保険を使えない。」ということを被害者が言われることもあるということである。

要するになるべく裁判をさせないということであるが、被害者には自分のために一生懸命働いてくれる弁護士を自由に選任できるものであるから、このような動きに惑わされてはならない。

 

6.交通事故被害者になった時の適切な対応

(1)事故発生時
まず、事故にあったら必ず警察に通報し実況見分をしてもらう必要がある。

そして、納得いくまで事故の状況を警察官に説明し、それを実況見分調書に記載してもらう必要がある。

この証拠の保存を曖昧にすると、過失相殺率が高まったり、反対に交通事故証明書の甲欄の第1当事者とされ、加害者にされることもありうる。
又、現場で加害者から示談を持ちかけられることもあるが、これに応じてはならない。

(2)事故発生直後
どんな治療を受けたらいいのか、現在、治療している病院がはたして適切かなど、被害者は迷うことが多い。

整形外科的治療はどこで受診してもそれ程変わらないと思うが、後の示談のことを考えると、被害者の被害の実態を適切に把握し、特に神経学的見地を重視し、これを理解している医師に診てもらうのが一番良いと思われる。

勿論、被害者に対し、親切で、カルテにも被害者の日々の症状を克明に記載している医師が望ましい。

現在、静岡自賠責損害調査事務所は、MRIの画像所見を一番重視しており、特にむち打ち被害者の場合には、事故発生直後に撮影してもらうことが必須となっている。

それも、1.5テスラではなく、3テスラもしくは3.5テスラで撮影してもらうことが望ましい。
そして、このMRIの画像所見を神経学的な見地から読影し、これを適切に表現してもらう必要があるので、医師に対し、時には非礼に映るかもしれないが、この点に関する質問は欠かすことはできないと思われる。

治ってもいないのに、多忙等を理由として治療を中断してしまう被害者がいるが、損害保険会社は、そのような事情を理解せず、かえって治ったものと考えるので、当初の治療は徹底的にしたほうがベターである。

(3)治療費、休業損害打ち切り時期

損害保険会社は、早目の段階で治療費の支払いを打ち切ることがあるが、治療の必要は加害者側が判断するものではなく、あくまでも被害者であると考えなければならない。

そして、最終的には、主治医の判断が重視されるべきである。
主治医が認めている治療が適切になされていれば、過剰診療となることはない。

但し、医師でも損害保険会社の治療費打ち切りの圧力に負ける方がいるので、そのときは転医して、健康保険を使い、自己負担分を後に請求するしかない。

休業損害の打ち切りも、損害保険会社の方から一方的に宣告されることが多いが、もし、生活ができないようであるならば、裁判所に損害賠償金の仮払い仮処分の申請をして対応するのがよい。

従前の仕事に復帰できるか否かも主治医の判断が重視される。

(4)症状固定時期

後遺障害の程度によって、症状固定時期は異なるが、症状が固定されると、以後の治療費は原則として自己負担になるので注意する必要がある。

症状固定時期についても、主治医の判断が尊重される。

損害保険会社は慰謝料や治療費を抑制するために、早目に症状固定をさせようとしているが、これに応じる必要はない。

症状固定時期は医師ばかりではなく、後遺障害案件を多く取り扱う弁護士がよく知っているので、事故の当初から相談し、目途をつける必要がある。

 

7.症状固定時、後遺障害等級認定時の弁護士のサポート

(1)実はこれが一番大切である。被害者のほとんどは、交通事故発生直後から、加害者の加入している自動車任意保険の一括払いの制度を利用している。

(2)任意保険・自賠責保険の一括払いは、それぞれの保険に請求するという請求手続きの二重手間を省く目的で1973年8月1日に実施された。

一括払いは、自動車任意保険の損害保険会社が被害者に一括して自賠責保険金相当額及び任意保険金を支払ったのちに自賠責保険金相当額を自賠責保険契約のある損害保険会社に請求するものである。

(3)被害者は、いちいち自賠責保険に治療費等の支払いをしなくてもよいので交通事故証明書や診断書、診療報酬明細書等の自己情報も取りつけず、加害者の加入している任意保険の損害保険会社に任せているのが現状である。

そのために、自分の症状がどのようなものかすら知らない被害者も多く存在する。

(4)そして、一括支払いのもとでは、後遺障害の診断書も、損害保険会社が取りつけることになり、その損害保険会社が静岡自賠責損害調査事務所に被害者の後遺障害について事前認定を申請することになる。

(5)これは被害者には便利であるが、くせものである。

すなわち、後遺障害認定にとって最も重要な自賠責後遺障害診断書を加害者の任意保険である損害保険会社が取りつけるため、被害者が関与することができないからである。

自賠責後遺障害診断書の記載内容が不十分であったとしても、被害者はこの入手に関与していないので、これに意見を述べることができないのである。

加害者の損害保険会社が被害者のために医師に修正を求めるということはありえず、極めて、被害者に不利になるのである。

又、その自賠責後遺障害診断書が損害保険会社の考え方と違い、高位の等級が認定されると予測される場合には、これを薄める顧問医の意見書がつけられることもあるという。

その結果、私どものところに相談に来る時には、既に事前認定により非該当もしくは低位の等級が認定されているのである。

(6)後遺障害の認定については、原則として被害者請求を選択し、自賠責会社を通じ、静岡自賠責損害調査事務所へ被害者自ら後遺障害の認定手続を申請しなければならない。

この場合、自賠責後遺障害診断書も自ら取りつける必要が生ずるが、医師の記載内容に不十分な点があれば、これについて意見を述べることも可能になるし、又、被害者側の意見書も付して申請手続をすることもできる。

一括支払いの制度を利用していても、少なくとも後遺障害認定の際には、これを解除してもらって、被害者請求をすべきである。

(7)しかし、私どもがここまで努力しても思うような等級を獲得することはなかなか難しいのが現状である。

被害者の声を大きくして、今後、自賠責損害調査事務所の調査を損害保険会社寄りではなく、被害者の利益を中心とする方向に改革させていかなければならない。

そのことによって、少々保険料が高くなったとしても、国民は受忍する必要があろう。

 

8.最後に

自動車を運転していれば、加害者になることもあり、又、被害者になることもある。

公害や薬害事件では、加害者、被害者に互換性はないが、交通事故では互換性がある。
その意味では、交通事故における損害賠償問題は国民的課題である。

今のような、加害者が損害保険会社の背後にひそみ、場合によったら、被害者に対し何ら謝罪もしないことは、加害者の人格も疑われ不幸なことである。

多くの加害者は、被害者に適正な損害賠償額が提示されることを願い、一刻も早く示談が成立することを望んでいるものと思う。

裁判所基準による損害賠償額の提示を拒否し、裁判が提起された場合のみそれに従うという損害保険会社の態度は、企業倫理にも反していると思われるし、国民を不幸にするものである。

私どもも訴訟による解決のみを望んでいるのではなく、一番良いのは訴訟外の示談であると考えている。
それができなくなっていることが最大の問題であり、それはほとんど損害保険会社の責任であると思う。

私どもの事務所はその抜本的解決のために先頭に立ちたいと思う。

以上

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