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NEUEZEIT(ノイエツアイト)4階
当事務所では、静岡市借地借家人組合の顧問弁護士を務めていることもあり、借地、借家をめぐる多くのトラブルの解決に尽力しています。
借地、借家の問題でお困りの方はお気軽にご相談下さい。
当事務所では、借地人、借家人の方からの相談を多く取り扱っていますが、勿論、地主、家主の方々からのご相談も受付けています。
家主、地主の方々に対しましても、判例に基づく適正な解決基準をお示ししますので、それを参考にしてトラブルの解決を図って下さい。
当事務所の所長 大橋昭夫弁護士が2013年2月2日、「更新料」について、講演していますので、借地人、借家人は勿論のことですが、地主、家主の方々もお読み下さい。
日 時 2013年2月2日
主 催 静岡市借地借家人組合
講 師 弁護士 大橋昭夫
本日は、2013年度の静岡市借地借家人組合の総会の講演にお招きいただきまして有難うございました。
この総会で私がお話ししますことは、毎年の恒例の行事になってしまいましたが、昨年は「借地権、借家権の相談」ということでお話ししたと思いますが、今年は「更新料」ということでお話ししたいと思います。
借地権、借家権の契約期間が満了し、更新時期を迎える方がいらっしゃると思います。
借地、借家契約の更新にあたり、地主、家主から更新料の支払いを求められトラブルになることも多々あると静岡市借地借家人組合の役員の皆様方からお聞きしています。
今日は、借地借家法において、更新料の支払いがどのようになっているのかの基礎知識をお話しし、トラブルに際し、皆様方がどのように対処したらよいのかお話ししたいと思います。
(1) 借地契約の期間の満了と更新
建物所有を目的とする借地契約は期間を定めるのが普通ですが、期間の定めがなければ、30年ということになります。
皆様の借地権は多くの方が、1982年(平成4年)7月31日以前に締結されたものであると伺っていますので、その場合、旧借地法の適用になります。
旧借地法は、借地上に建てる建物が、木造建物などの非堅固建物の場合、20年以上の期間で合意したときはその期間、20年未満の期間で合意したときは30年に延長され、何ら期間が合意されていないときは30年とされています。
更新はこの場合、20年となり、さらに20年ごとに更新されていくことになります。
この意味で旧借地法における借地権は、建物が朽廃しない限り、永遠に存続することになり、借地権に財産性が認められるわけです。
これに対し、1982年(平成4年)8月1日以降に契約された借地権は、借地借家法の適用があり、30年以上の期間を定めたときはその期間、30年未満の期間を定めたときは30年に延長され、期間を定めなかったときは30年の期間となります。
更新も、最初の更新は20年以上、2回目以降の更新は10年以上となっています。
(2) 借地契約においては更新が原則
普通の物の貸借の場合、その期間が満了すれば契約は終了し、更新される場合は、貸主と借主の双方が合意した場合のみです。
しかし、借地権の場合には、旧借地法、借地借家法とも更新の合意がなくても借地契約は終了せず、更新されることが原則となっています。
それは借地権が財産性のある強い権利であり、又、社会経済的な見地からしても、借地人の建物の存在を保護しようとした立法者の意思の反映でもあります。
旧借地法、借地借家法は、地主の側に土地の明渡しを求める「正当事由」がある場合にのみ、更新の拒絶を認めています。
この「正当事由」は地主の側の明渡しを求める事情だけで判断されるのではなく、借地人の側の土地を利用しなければならない事情も強く考慮されますので、「正当事由」が認められる場合は、ほとんどないのが現状です。
(3) 借地人からの更新請求と更新拒絶
借地期間の満了に際して、借地上に借地人の建物が存在する場合に、借地人が地主に対して、借地権を更新してくれという請求をしたときは、地主が前述のように自己使用の必要性があることなどを理由として「正当事由」による異議を遅滞なく述べない限り、借地契約は更新されたことになります。
前述しましたように、地主の主張する「正当事由」は、裁判所によってほとんど認められませんから、異議の要件を満たさないということになります。
このように地主の異議が認められない場合には従前の借地契約と同一の条件で更新されたものとみなされます。
但し、更新後の借地権の期間は旧借地法が20年間、その後も20年、借地借家法は1回目の更新が20年、2回目以降の更新は10年となっています。
(4) 使用継続による法定更新
借地権の期間が満了しても、借地上に建物が存在し、借地人が土地の使用を継続しているときは、地主が自己使用などの正当事由のある異議を述べない限り、借地契約は更新されたものとみなされます。
更新後の借地権の存続期間は、前述の更新拒絶の場合と同じです。
(5) 借地権の更新と更新料の支払い
今日のお話しの本題であります更新料の支払いですが、まず更新料の性格からお話ししたいと思います。
更新料の性格としましては、借地契約締結時から更新時までの地価の上昇によって借地人が得た利益を、更新時に地主に返還するものであるとする考えや、更新後の賃料が新規に借地契約を締結する場合より安くなるので、その分の賃料の前払いであるという考えがあります。
他にも、更新の対価としての権利金であるとか、地主との信頼関係を維持するためのお金の贈与であるとする考え方があります。
権利金や贈与であるとする考え方は、借地権の財産性を著しく無視するもので、もとより採用できませんが、前者の2つの考え方も、土地が値上がりするどころか安くなっている現状では、到底、合理的な理由とはなりえません。
いずれにしましても、旧借地法、借地借家法とも更新料に関する何らの定めをしていないのでありますから、借地人は、借地権の更新にあたって、更新料などというお金を支払う必要はないのです。
最高裁も昭和51年10月1日の判決で「土地賃貸借の満了にあたり、賃貸人の請求があれば当然に賃貸人に対する賃借人の更新料支払義務が生じる旨の商慣習ないし事実たる慣習は存在しない。」と判断していますので、この点について、借地人であります皆様方にもご理解いただけるものと思います。
(6) 借地契約に更新料支払いの特約がある場合
それでは借地契約に更新料支払いの特約があるが、更新の合意がなされず法定更新された場合、契約に定められた更新料の支払いはどうなるのでしょうか。
この点に関して、裁判所は、更新料の性格上、法定更新の場合を除外すべき理由はないとして借地人は地主に対して特約に基づく更新料を支払うべきものだとする考え方と、法定更新の場合は、更新料を支払う必要がないとする考え方にわかれています。
結局、これは、個々の事案で具体的に借地人と地主の意見を判断していく他、方法がないものと思われます。
(7) 更新料不払いの効果
借地人が地主に対し、更新料支払いの約束をしたにもかかわらず、更新料の支払いをしなかった場合、借地契約は解除されてしまうのでしょうか。
この点について、最高裁の昭和59年4月20日の判決は、「更新料の不払いが当該賃貸借契約の解除原因となりうるかどうかは、単にその更新料の支払がなくても法定更新されたかどうかという事情のみならず、当該賃貸借契約成立後の当事者双方の事情、当該更新料の支払の合意が成立するに至った経緯、その他諸般の事情を総合考量したうえ、具体的事実関係に即して判断されるべきだ」として、「本件更新料の支払は、賃料の支払と同様、更新後の本件賃貸借契約の重要な要素として組み込まれ、その賃貸借契約の当事者の信頼関係を維持する基礎をなしているものというべきであるから、その不払いは、この基礎を失わせる著しい背信行為として本件賃貸借契約それ自体の解除原因となりうるものと解するのが相当である。」として、更新料の不払いを理由とする賃貸借契約自体の解除を肯定しました。
つまり、この問題は、具体的事情を考慮した上で、更新料の不払いが、借地人と地主との信頼関係を破壊する背信行為といえるか否かにかかっているものと思われます。
(1) 借家契約の期間の満了と更新
借家契約に存続期間を定めなかった場合には、家主からも、借家人からもいつでも解約申入れをすることができます。
家主からの解約申入れの場合には、解約申入れ後6か月が経過したときに借家契約は終了し、借家人からの解約申入れの場合には解約申入れ後3か月が経過したときに契約が終了します。
但し、家主が解約申入れをするには「正当理由」が必要です。
最近、静岡市内でも耐震を理由とした建替えということで、家主が借家人に明渡しを迫る例が多いのですが、これが、ただちに「正当理由」となることはありません。
借家契約に期間を定める場合には1年以上としなければなりません。
1年未満の期間を定めた場合には、期間の定めのない借家契約であるとみなされます。
期間の定めのある借家契約の場合には期間満了の1年前から6か月前までの間に、家主又は借家人のいずれかから、相手方に更新をしない旨の通知、又は条件を変更しなければ更新しない旨の通知をしなかったときは、期間の定めのない契約となることを除き同一の条件で契約は更新されたものとみなされます。
更新しない旨の通知があった場合でも、期間満了後も借家人が建物の使用を継続する場合に、家主が遅滞なく異議を述べなかったときは、契約は更新されたものとみなされます。
(2) 借家権の更新と更新料の支払い
借家契約に更新料の支払いの定めがなければ更新料を支払う必要はありません。
又、更新料の支払いの定めがあっても借地借家法30条に借家契約の更新等について、借家人に不利な特約は無効としていますので、借家人はただちに更新料を支払うということにはなりません。
家賃の3か月分の更新料の支払いをするという特約はどうかと思われますが、1か月分程度であれば借家人に不利な特約でないとして、その支払いを認める判例もありますので注意しましょう。
更新料の支払いをしない場合、借家契約が解除されるかの問題ですが、これも借地契約の場合と同じで、ただちに解除ということにはならず、その不払いが、家主と借家人の信頼関係を著しく失わせたかどうかにかかっているものと思われます。
家賃1か月分程度の更新料の不払いでは、まず解除は認められないものと思います。
(3) 消費者契約法と更新料の支払い
消費者契約法は消費者たる借家人に特に不利益な規定は効力がないとしていますので、更新料が家賃の数か月分にもなる場合は無効といえるでしょう。
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