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借地借家トラブル講座

借地借家トラブルどうしよう講座
2006年9月9日(土)、静岡市産学交流センター(ペガサート)7階において、静岡市借地借家人組合主催の講演会が開催されました。この講演会は毎年恒例になっており、マスコミで事前報道される結果、参加者も多く好評です。当所所長弁護士大橋昭夫が、借地、借家をめぐるトラブルとその解決方法をやさしく解説しました。

この講演会には、借地、借家人の方々ばかりではなく、地主、家主の方々も参加し、熱心に聴講していました。この講演は、借地借家法(旧借地法、旧借家法を含む)の基礎的な話しに触れただけのものでありますが、一般の方々にも参考になると思われますので、当日、配付しました講演要旨を次に掲載します。

2006年9月9日【土】午後1時30分
主 催  全借連静岡市借地借家人組合
於     ペガサート7階
講 師  弁護士・静岡大学法科大学院教授 大橋昭夫
静岡市葵区鷹匠1丁目5番1号NEUEZEIT4階
鷹匠法律事務所
TEL 054-251-1348  FAX 054-251-5526

1 日本国憲法とすまいの人権

(1)  快適なすまいは基本的人権の1つ、憲法25条の生存権によって保障さる。
(2)  1995年、イスタンブールで開催された第2回国連人間居住会議で「居住の権利」が宣言された。
(3)  2006年6月2日に成立した「住生活基本法」でも、上記は確認されている。
(4)  借地借家法は社会的弱者である借地人、借家人を保護するための社会立法

2 借地権、借家権はどのような権利か

(1)  借地権について
平成4年7月31日までの契約は、旧借地法の適用
平成4年8月1日以降の契約は借地借家法の適用
(2)  借家権について
借地借家法の適用
(3)  借地権、借家権とも法律によって手厚く保護されている。

3 借地権の内容

(1)  借地権の存続期間
①   堅固建物所有で期間を定めたとき
30年以上の期間を定めたときはその期間
30年未満の期間を定めたときは60年に延長される。
②  非堅固建物所有目的で期間を定めたとき
20年以上の期間を定めたときはその期間
20年未満の期間を定めたときは30年に延長される。
③  期間を定めていない場合
堅固建物について60年、非堅固建物について30年
以上は旧借地法の適用のある場合
④  借地借家法の適用のある借地権については、普通借地権と定期借地権
で異なっている。
(2)  旧借地法による借地権は永久の権利と考えてもよい。
堅固な建物はその後30年間、非堅固建物はその後20年間という期間で更
新され、その後も同期間で更新される。
(3)  地主側に正当事由がなければ、更新を拒否できない、正当事由は裁判所
でほとんど認められない。

4 借家権の内容

(1)  借家権の存続期間
①  期間の定めのない借家契約
家主からの解約申入れ後6ヶ月が経過したときに契約終了、借家人からの解約申入れの場合には、解約申入れ後3ヶ月が経過したときに契約終了
②  期間を定めた借家契約
期間を定める場合には、1年以上の期間を定めなければならず、1年未満の期間を定めた場合には、期間の定めのない借家契約となる。
(2)   借家権の更新
期間の定めのある借家契約の場合には、期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に家主または借家人のいずれかから相手方に更新をしない旨の通知、または条件を変更しなければ更新をしない場合の通知をしなかったときに、同一の条件で契約が更新される。
(3)   家主に正当事由がなければ更新を拒否できない。
(4)  定期借家権については更新できない。

5  借地権、借家権は相続の対象となる

借地権を相続した場合、借地人が地主から名義書替料を請求される場合があるが、支払わなくてもよい。

6 地主や家主が代わった、どうしたらよいか

(1)   賃借権の設定登記や建物の保存登記をしてあれば、借地人は新しい地主に対抗することができる。
(2)   家主が代わっても、借家人は建物の引渡しを受けていれば、新しい家主に借家権を主張し居住することができる。借家契約の内容もそのまま新しい家主に引き継がれる。

7   借地、借家における更新料とは何か

(1)   更新料とは、借地、借家の賃貸借契約が更新される際に、更新の対価として支払われる一時金のこと
(2)   更新料は法律に定めがなく、その地域内において借主に支払いを強制する
程度の慣習がある場合に貸主が請求できるとされているが、判例でも、ほと
んど認められていない。特に借家の場合は認められない。
(3)   更新料を支払うことの合意をしていても、借地借家法が、賃借人に不利な
条項は無効であると定めていることから無効であると解しうる余地がある。
但し、判例は、更新料支払いの合意は、その金額が適当であれば無効では
ないとしている。

8  借地上の建物の増築、改築をするにはどうしたらよいか

(1)  借地契約に増改築禁止の特約がなければ、増改築は自由
(2)   増改築禁止の特約がある場合、まず地主の承諾を得る。勝手に増改築する
と借地権解除の事由となる。
(3)   地主が承諾しない場合は、借地借家法17条2項により、裁判所に対し、
地主の承諾に代わる許可を求めることができる。
(4)   この許可の場合、裁判所から承諾料の支払いを命ぜられることがある。承
諾料の額は更地価格の3パーセントないし5パーセント

9   借地権の譲渡はできるか

(1)   まず地主の承諾を得る。勝手に譲渡すると借地権解除の事由となる。
地主が承諾しない場合、借地上の建物の譲渡を受けた第三者は地主に対し
て、建物を時価で買取ることを請求できる権利がある。

(2)   借地権譲渡の承諾を地主がしないときは、地主の承諾に代わる裁判所の許可を申立てることができ     る。
ほとんどの場合、承諾料の支払いが許可の条件となる。

10   地代、家賃を値下げ、値上げするにはどうしたらよいか

(1)   地主、家主と話しあいによって決める。
(2)   話しあいがつかない場合は、簡易裁判所に調停の申立てをすること。(調停前置主義)
(3)  それでも話しあいがつかなければ裁判所により決めてもらう。
(4)   この場合、従前の賃料を法務局に供託したり、あるいは地主、家主に支払っておけばよい。但し、不足の場合10パーセントの利息をつけなければな らない。
(5)   借地については、借地借家法11条、借家については、借地借家法32条に増減請求の規定がある。

11   建物を退去するにあたり、敷金を返還しないといわれたらどうしたらよいか

「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(国土交通省)によって処理したらよい。その他、消費者契約法10条の不当に消費者の利益を害する条項は無効であるとの規定を主張することもできる。

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