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[第3回くらしと法律セミナー]悪徳商法にご用心

弁護士 鶴岡寿治
第3回 くらしと法律セミナー
2014年5月25日(日)
午後1時30分~3時30分
静岡県教育会館

第1 はじめに

悪徳商法を行なう業者は様々な手口で忍び寄ってきます。

最近のニュースを見ると,一人暮らしのお年寄りが悪質商法の被害に遭うケースがとても目立ちます。時には数千万円単位の被害に遭われる方もいらっしゃいます。老後のために貯めていた大切な財産が一瞬で奪われてしまうのです。

もっとも,悪徳商法の被害に遭うのは資産を持っている高齢者の方ばかりではありません。若い方も被害に遭われるケースは多いですし,資産をそれほど持っていない方でも被害に遭われるケースはあります。

悪徳商法は,日々,新たな手口が次々と生み出されており,法律で規制してもその抜け目を狙って新たな手口を考えてきます。悪徳業者の人はこういったエネルギーをもっと有用なことに用いれば良いのですが,なかなかそうは行きません。

そこで,今日は悪徳商法と呼ばれるものの手口と,どうやったら被害を防止できるか,そして万が一被害に遭ってしまった場合にどうやって対処したらよいのか,そのような話をしたいと思います。

これからお話しする事案と解決方法は,実際に私が取り扱った事件を中心にアレンジを加えたものです(そのままの事件というわけではありません。)。

 

第2 お金がある人を狙う悪徳商法

1 訪問販売と耐震工事

【事例】

一人暮らしのAさんの自宅に「無料で耐震診断をします。」と言ってリフォーム業者が訪れました。Aさんは無料だからと思って業者に自宅の床下や天井裏を点検してもらったところ,業者が「このままでは東海地震ではなくても,少し大きな地震が来たら建物が直ぐに倒壊します。」「当社の開発した補強材を使えば安心です。」などと言ってしつこく耐震補強をすするように勧めてきたため,根負けしたAさんは耐震補強工事をしてもらうことになりました。業者が「一刻も早く工事しなければならない。」と急かすことから,Aさんは契約書も交わすことなく工事が始まってしまいました。工事が終わると業者はAさんに300万円を請求してきました。不安になったAさんが検査機関に調べてもらうと,補強材は意味がないことが分かりました。

【ポイント】

・工事の説明や工事費用の見積りをしてもらっていない。

・補強材に意味がない。

【解決方法】

業者がその営業所以外の場所で,商品の販売や役務の提供の勧誘を行って契約を締結させることは,特定商取引法にいう「訪問販売」にあたります。営業所以外の場所というのは,業者が消費者の自宅を訪れる場合だけではなく,路上で声をかけて店に連れ込むキャッチセールスなども含まれます。

特定商取引法の訪問販売にあたれば,業者は契約の申し込みを受けた時に,「申込書面」という書類を「直ちに」交付しなりません。また,実際に契約を締結する時には「契約書面」を原則として「遅滞なく」交付しなければなりません(申込と契約を同じ時に行う場合には,「直ちに」交付しなければなりません。)。

「申込書面」「契約書面」には,事業者の名前や商品の数量,種類や販売価格,支払時期や方法,契約書面交付時から8日以内であればクーリングオフできる(申込の撤回や契約の解除を行うこと)ことなど,省令で定められた事項を記載しなければなりません。

省令で定められた事項の記載された「申込書面」「契約書面」が交付されていない場合には,8日間が過ぎていてもクーリング・オフと言って,申込を撤回したり,契約を解除することができます。クーリング・オフをした場合には,代金を支払う必要はありませんし支払った代金があれば返金を求めることができます。また,購入した商品があれば業者の費用負担で商品を返還することもできます。

なお,「申込書面」「契約書面」を交付していない場合には,行政処分の対象になりますし,場合によっては刑事処分の対象になります。

事例の案件では,書面も交付していませんからクーリング・オフが可能であり,クーリング・オフ通知を出して代金の支払いを拒絶することができます。また,意味のない補強材を売りつけるような悪質な業者ですから,警察に被害届を出して刑事事件にしてもらっても良いでしょう。

 

2 着物の展示会商法

【事例】

Bさんは,以前に浴衣を買ったことのある着物屋から,「近くのデパートで展示会を行うのでぜひ見に来て下さい。」という案内状が届き,展示会に出かけました。Bさんが着物を見ていると,店員が近寄って来て「きっとお客様にお似合いですよ,試着してみませんか。」と言われて試着することになりました。試着室を出ると,他の店員や客も集まっており,口々に「似合いますよ。」などと言われ,気を良くしたBさんは結局着物を購入することになりました。後日,「先日の着物を着て展示会に来て下さい。」と言われて別の展示会に行くと,同じように試着を勧められて,やはり着物を買うことになってしまいました。このようなことが4回続きましたが,Bさんは日常,着物を着る機会がありません。また,クレジットで着物を購入していて,支払が大変になっています。

【ポイント】

・必要の無い着物を何着も購入させられている。

・クレジットで購入している。

【解決方法】

顧客を展示会会場に呼び出して販売員が取り囲み,自由に商品が選べない状況にして商品を購入させる「展示会商法」と呼ばれるものですが,これは先ほどの「訪問販売」に該当するとされています。行政通達があります。

展示会商法では,気分が舞い上がってしまい多くの商品を購入させられてしまうことがあります。また,そうではなくても例えば,お年寄りを狙って寝具や健康器具などを必要以上に売りつける業者もいます。

そういった不必要な商品を大量に売りつけるという案件が後を絶たなかったことから,2008年の特定商取引法改正によって「過量販売解除権」という規定が設けられています。訪問販売により,日常生活において通常必要とされる分量を著しく超える商品または役務の契約を締結した場合に契約を解除することができるとされています。ただし,契約を締結することが必要な特別の事情がある場合は除かれています。

どのような場合に「通常必要とされる分量を著しく超える」といえるかについては,①1回の契約で過量販売になる場合,②複数回の契約で過量販売となる場があり,後者については過去の取引と統合すると過量になる場合と過去の取引で既に過量になっているのにさらに購入させられる場合があるとされています。

この「過量販売解除権」を行使した場合で,商品をクレジットで購入している場合には,既に支払ったお金をクレジット業者から取り戻せる場合もあります。

事例の場合だと,Bさんは日常的に着物を着る機会がなく(Bさんがお茶やお花の先生や料亭の女将などであれば「特別の事情」があることになります),4着も持っている必要はありませんから,少なくとも2着目以降の着物は過量販売解除権の対象になると考えられます。

この場合,着物屋とクレジット会社に契約解除の通知を出して,着物の販売契約とクレジット契約を解除することになると思われます。なお,着物の返品費用は業者負担になりますので,宅配便の着払いで返品すると良いでしょう。

 

3 貴金属の訪問買取

【事例】

Cさんの自宅に,買取業者から「要らなくなった古着などを買い取ります。」と電話があったので,ちょうど古着類の処分に困っていたCさんは業者に来てもらうことになりました。ところが,訪ねてきた業者はCさんの指輪を見るや「この指輪を3万円で買いますよ。」「他にも使っていない貴金属などはありませんか?」と言って,ほかの使っていない貴金属を持って来させると,これを見て「合計6万円で買い取ります。」と言って,古着類は買い取らずに,貴金属だけを買い取って帰ってしまいました。

【ポイント】

・業者が買い取っているので訪問販売ではない。

・業者は目的を告げていない。

・値段も分からない。

【解決方法】

業者が商品を自宅等に「売りに来る」ような訪問販売については規制がありましたが,業者が商品を自宅等に「買いに来る」訪問買い取りについては従来規制がありませんでしたが,2012年の特定商取引法改正によって「訪問買取」についても規制の対象になりました。

規制ができるということはトラブルが多いということの裏返しでもあります。先日も,訪問買い取り業者に対する初の行政処分が消費者庁から出されています。

訪問購入の場合,業者は勧誘の要請をしていない者に対して勧誘することはできません。これを不招請勧誘の禁止といいます。仮に勧誘する場合であっても,相手方が勧誘を受ける意思がないことを確認しないで勧誘することはできませんし,勧誘受諾意思がないことを確認した後の勧誘も禁止されています。また,勧誘目的や業者名も明示しなければなりません。

訪問買取業者は,訪問販売業者と同じように省令で定められた事項を記載した「申込書面」と「契約書面」を交付しなければなりません。「現金取引」と言ってその場で商品の交付と代金の支払を行う場合には,「契約書面」は「直ち」に交付しなければなりません。

訪問買取の場合にもクーリング・オフが可能です。契約書面の交付から8日以内とされています。

民法と異なり,商品が第三者に転売されている場合であっても,解除の効力を主張することができる場合があります。第三者が訪問買取によるもので,クーリング・オフされる物品であることを知っている場合には,第三者にも解除の効力を主張することができるのです。このような第三者を「悪意の第三者」と言います。商品が悪意の第三者の手元に残っていれば返してもらうこともできます。商品が溶解されるなどして残っていない場合には,購入業者自体に損害賠償請求を行うことになります。

事例の案件では,書面が交付されていないのでクーリング・オフを主張して宝石類を取り戻すことができます。また,業者が目的を隠して勧誘をしていることから,行政処分の申し立てなどをすることもできます。

 

4 未公開株商法

【事例】

Dさんの自宅に,X社のパンフレットが届き,後日,別の業者から「X社が近いうちに株式を上場する。」「有望な会社なので値上がりは確実」「Dさんが50株買ってくれれば当社が4倍の価格で買い取る。」「パンフレットが届いてるなら是非買って欲しい。」という電話がありました。Dさんは,500万円を指定口座に振り込んでX社の株式を買いました。振り込んだ数日後にX社の株券が送られてきましたが,X社とも買取業者とも連絡が取れなくなってしまいました。

【ポイント】

・未公開株は原則として売買することができない。

・現在,株券は原則として発行されていない。

【解決方法】

いわゆる未公開株商法というものですが,最近は未公開株というケースは殆どなく,「株式転換社債」の購入を持ちかけられるというケースが多くなっています。

従来は,「実在の株式非公開会社の株式が公開される。」という手口が多かったのですが,2005,6年ころから実在しない会社や休眠会社の名前を使ってそれらの会社の株が公開されることを口実とした詐欺的勧誘が行われるようになりました。

あたかも本物のようなパンフレットや株券が送られてくるので信じて振込をしてしまう方が多いのですが,対象となった会社を調べてみると,何年も前に事実上倒産をして名義だけが譲渡されていたり,設立されたばかりであったりと,実体がないことが分かります。のみならず,会社代表者が偽造の免許証等を使って会社を設立することもあります。

従来は,振込口座を凍結する手段が有効だったのですが,最近では口座凍結を警戒して,銀行振り込みの方法は指定せず,ゆうちょの「レターパック」で私書箱に送付させたり,大胆にも直接自宅まで現金を取りに来るという手口も増えています。こういった「受け子」「出し子」はアルバイト感覚でやっている人が多く低年齢化もしており,また実際の詐欺グループの中枢部とは全く面識がないこともあって,末端を捕まえてもどうしようもない場合が多いのも現状です。

口座凍結などによって損害の大部分を回収できる場合もありますが,私の感覚では騙されてから時間が経ってると解決が困難になる傾向にあります。また,現金を直接受け渡しているケースだと追跡がなかなか困難です。

まずは周りの人が気付くこと,そして適切な相談機関に相談することが肝心だと思います。なかには相談機関を名乗ってさらに現金を詐取する連中もいますので,面倒でも必ず相談場所まで出向くことが大切だと思われます。

5 CO2排出取引権商法

【事例】

一人暮らしのEさんの自宅に,「CO2排出取引権の取引をしませんか。」「絶対に儲かります」という勧誘の電話がかかってきました。Eさんは,原発事故以来環境問題に興味を持つようになっており,EUではCO2排出取引権が取引の対象になっているという説明も受けて,取引をすることになり,3000万円を預けました。ところが,送られてきた取引明細書を見るといつの間にか2500万円以上の損失が発生しており,業者からは追加保証金を入れるように要求されています。

【ポイント】

・日本には「CO2排出権取引」を取り扱う市場がなく業者との相対取引である。

・「CO2排出権取引」自体を取引するわけではなく差金決済取引である。

【解決方法】

CO2排出取引権はEUでは取引市場があり頻繁に取引が行われているようですが,日本では取引市場がありません。そのため,業者は相対で差金決済取引をおこなっているものと思われます。

株式などの通常の証券であれば,証券会社を通じて株式市場で取引をすることになるのですが,このCO2排出権というのは日本で取引する市場がありません。業者と取引をするだけになります。これを相対取引と言います。取引を委託している業者が相手になるので,常に利益相反関係が発生するという,とても危険な取引です。そのため業者には「カバー取引」といって,実際の市場で取引を行うことが求められています。

一応取引の指標としているのが,EUの市場で取引されている「CO2排出取引権」の価格と,ユーロと円の為替相場の価格であり,レートなども業者が一方的に決定していることが多いようです。

このように業者の支配領域内で取引を行うため,ほぼ損失が出ることになり,その金額についても大きくなることから

CO2排出取引権については直接これを制限する法律がないことから,悪質業者がこの分野にこぞって参入しています。

ただし,消費者庁が「役務の提供」にあたるとして特定商取引法(訪問販売)を適用して業者に行政処分を行ったケースもあり,特定商取引法で対応することもできる場合もあると思われます。

具体的な解決方法としては,⑴取引の仕組み自体が違法である,⑵具体的な取引形態(節明を十分にしていない,絶対に儲かる等と断定的判断の提供をしている,取引の必要がない者に取引を行わせている)が違法であると争って返金を求め,返金させることになります。

最高裁判例がある分野でもなく,今後,理論構築が必要な分野だと思われますが,被害金額が大きくなる傾向にあるので,このような危険な取引には絶対に手を出さないというのが予防方法であり解決方法なのかもしれません。

第3 お金が無い人を狙う悪質商法

1 クレジットカードの現金化

【事例】

Fさんは,消費者金融5社から300万円の借入があり,これ以上借入れができなくなっていました。返済に困ったFさんは,ある日,インターネットを見ていると「クレジットカードのショッピング枠を現金化」というホームページを見て,その業者に連絡すると,「カードで当社の指定する商品を買って頂き,この商品を当社が買い取ります。」と言われたので,紹介された店でクレジットカードを使ってビー玉5個を50万円で購入し,このビー玉を業者に40万円で買い取ってもらいました。クレジットカードは一括払いを選択させられたため,現在,50万円の請求が来ています。

【ポイント】

・クレジットカードで購入した商品を代金未払いの間に転売することはできない。

・10万円を利息・手数料としてとられている。

【解決方法】

2010年の改正貸金業法施行によって,いわゆる総量規制が導入され,貸金業者は,年収の3分の1を超える貸し付けが原則として出来なくなりました(銀行は総量規制の対象外です。)。

この前後から,クレジットカードのショッピング枠を現金化するという広告が増えて来ている気がします。端的に言うと,消費者にカードで商品を買わせてその商品を業者が買い取って,事実上融資を行うという方法です。

ただし,クレジットカードで購入した商品は,代金を支払うまで,販売店ないしクレジットカード会社に所有権があります。これを一般的に所有権留保と言います。しがたって,代金を支払わない商品を転売することはクレジットカードの規約に反する違法行為となります。強制解約されても仕方がありません。

この業者は,クレジットカード会社から50万円を受け取る一方で,Fさんには40万円しか渡しておらず,Fさんはクレジットカード会社に50万円プラス手数料を返済する義務を負うことになります。そうすると,実質的には10万円は業者が利息・手数料として徴収したとみることができます。そうすると,月25%の利息・手数料を徴収したことになり,出資法の可罰金利109.5%を超えてる利率での「貸し付け」ということになり,刑事処分の対象になります。業者によって利率に差はありますが,現金化業者の実態は登録もしていない「ヤミ金」なのです。

さらに,ビー玉1個10万円というのは明らかな暴利行為であり,公序良俗違反と言えますので,ビー玉の売買契約自体が無効ということで,クレジットカード会社に対して,キャンセル処理を求めることもできると思われます。もっとも,Fさんは多重債務なので,適切な債務整理も必要になるでしょう。

ヤミ金には断固とした対応を取ることが大切ですので,弁護士や警察に相談することが大事です。

2 偽装質屋

【事例】

年金生活を送るGさんは,お金に困って知り合いから業者を紹介されました。その業者の説明では,風鈴を買って質入れしてくれれば,20万円を融資する。返済は銀行振り込みの方法で,年金から優先的に返済してもらうので年金手帳と振込口座を預かると言われ,その通りにして20万円を受け取りました。年金の受取額が減ってしまい生活がさらに苦しくなったので質流れをしたいと申し出たものの,応じてもらえません。

【ポイント】

・質屋では銀行振り込みの方法で返済することはできない

・質屋では元金が支払えなくなったら流質すれば返済義務はなくなる

・年金担保は原則として違法

【解決方法】

質屋は,貸金業者と異なり出資法の可罰金利(月利約9%)までの利息をとることが許されています。質屋には零細事業者が多く,質物の保管義務を負う上,元金を支払えない場合の流質が認められていることなどがその理由とされています。

この高い利息をとれる制度を悪用したのが「偽装質屋」と呼ばれる業態で,一応質屋業登録をしているものの,やっていることは本来の質屋ではなく,その正体は単なる「ヤミ金」になります。福岡や群馬で多発しているものの,静岡ではまだ確認されていません。

質屋は,質草を担保にお金を貸してくれます。質入れした人は,利息と元本を払って質物を取り戻すか,質物を諦めて流質させれば良いことになっています。利息は月ごとに店頭で支払いますが,元本の分割支払いは無く,元本を一括で支払って質物を取り戻すことになります。

事案の場合,年金も担保に取っておりこの点でも違法ですが,質流れを選択しているのに質流れをさせてくれないという点も問題です。

そもそも価値の低い物を高く担保評価して高額の金銭を貸し付けるという点において,正当な質屋と言えません。

結局正体はヤミ金なので,毅然とした対応が必要となり,受領した金員について返還する義務は負いません。むしろ余計に支払った利息相当額の返還請求をすることになります。

3 サクラサイト商法

【事例】

Hさんは,家計が苦しかったので空いている時間にできる副業を探そうと考え,「在宅副業高収入」と書かれていたサイトを閲覧したところ,自動的に出会い系サイトに登録されてしまいました。その直後から男性から交際を求めるのメールが相次ぎ,Hさんは,「1日10万円を払うので相談にのって欲しい。」という会社社長を名乗る男とメール交換をするようになりました。しばらくメール交換を続け,御礼を払うと言われて振込口座を教えようと思ったところ「文字化けする。これを解除するには手数料がかかる。」等と言われて,次々ポイントを購入させられ,Hさんはクレジットカードで合計30万円支払ってしまいました。

【ポイント】

・サクラサイトは詐欺

【解決方法】

通常のパソコンのメールや携帯電話のメールは,送受信しても通信費以上の費用は発生しません。いわゆる「出会い系サイト」は,そのサイト内に開設された専用のメールボックスを通じて相手とやり取りをします。メールボックス内のメールを読んだり,相手のメールボックスにメールを送ったりするごとに,ポイントがかかります。ポイントは1ポイント10円等と定められており,「出会い系サイト」を利用する場合には,通信費に加えて,ポイント料が発生します。これを都度課金と言います。

通信費はプロバイダや携帯電話会社の利益になりますが,ポイント料はサイト運営業者の利益になります。そうすると,サイト運営業者は利用者に多数のやり取りをさせることができれば多くのポイント料(利益)を得ることができます。そのため,あの手この手を使って利用者にメールのやり取りをさせようとするのです。

事例のような大金持ちの社長や,芸能人のマネージャー,占い師など,様々な架空のキャラクターを利用者に仕向けてメールのやり取りを行わせ,金銭援助や御礼をするなどと誘っては連絡が取れなくなるという手口を行います。

昨年摘発された業者はマニュアルまで用意してアルバイトを雇って,多くの利用者を騙し続けていました。

「出会い系サイト」というと異性の交流を求めて登録するというイメージが多いと思いますが,内職サイトや占いサイトなどに登録した際に同時に登録され,言葉巧みに勧誘されるというケースも目立ちます。

ポイント料は現金で振り込んだり,クレジットカードで支払ったり,電子マネーで支払ったりと複数の支払方法がありますが,クレジットカードであれば,多くのカード業者が問題が解決するまで支払いを猶予してくれたりキャンセル処理を行ってくれます。また,電子マネーについても取引履歴を取り寄せて,返金交渉を行うこともあります。

これらの処理はサクラサイトが詐欺であることを前提にしています。

中には真面目に運営している業者もありますが,雑誌広告などに出ている業者ですら違法な業者もありますので,こういった業者には手を出さないことが大切です。

早期であれば,交渉や訴訟によって払ったお金を取り戻せるケースも多いので,早めに相談された方が良いでしょう。

第4 お金があっても無くても狙われる悪質商法。

1 カニの送り付け商法

【事例】

一人暮らしのIさんの自宅に北海道の水産業者を名乗る者から突然電話があり,「今が旬のカニを食べたくありませんか。」と尋ねられたので,Iさんは「お金があれば食べてみたい。」と答えました。後日,業者からカニが代金引換でIさんの自宅に送付されてきました。Iさんが業者に連絡すると「あなたが食べてみたいと言ったから送ってあげたんだ。」「法律では返品できないことになっている。」などと凄まれてしまい,代金を支払ってしまいました。

【ポイント】

・あいまいな返答を根拠に商品を注文したことにされている。

・返品できないのは本当か

【解決方法】

これは「送り付け商法」と呼ばれる類型の一つです。「送りつけ商法」は「ネガティブオプション」とも言って,商品購入の申し込みをしていない消費者に対して,売買契約の申し込みをし,商品を送付することを指します。

消費者の側で要らないと意思表示をして返品すればよいのですが,商品受領後14日以内(商品引取り請求をした時にはその時から7日以内)に使用・消費してしまうと,購入を承諾したものとして契約が成立してしまいます。逆に14日(ないし7日)を過ぎれば業者からの返品請求ができなくなるので,使用・処分・消費してしまっても構いません。

事例の場合には,そもそも注文をしたとは言えないような事案である上,電話で勧誘しているので電話勧誘販売となります。

そうすると事業者は申し込みに対しては「申込書面」を「遅滞なく」交付しなければならず,契約が成立した場合には「遅滞なく」省令の記載事項をすべて記載した「契約書面」を交付しなければなりません。この「契約書面」が交付されてから8日以内であればクーリング・オフが可能ですし,「契約書面」が交付されていなければ,いつでもクーリング・オフが可能です。

問題は,カニのような生鮮食品についてはクーリング・オフができないという業者の主張ですが,「相当期間品質の保持が困難な商品」についてはクーリング・オフ適用除外商品として政令で指定されることになっていますが,カニの送りつけ商法が相次いだこともあって,まだ具体的な政令指定はなされておらず,カニであってもクーリング・オフはできます。

代金を支払う前であれば受取拒絶をして返品をすればよいですし,代金を支払った場合であっても書面でクーリング・オフを通知して,代金着払いで商品を返還すれば足りることになります。

2 寝具のネットワークビジネス

【事例】

Jさんは,友達から誘われて「友達や家族に布団を売るだけで手数料が入るというビジネスがある。説明会に行ってみないか。」と誘われ,街中のビルの会議室で開かれた説明会に参加して,登録手続料を支払って会員になりました。しばらくは代理店から布団を仕入れて,家族や友人に布団を売ることができたのですが,市場価格よりも高額なためすぐに頭打ちになり,支払った登録手続料を回収できず,布団ばかりが増えて,友人たちも遠ざかってしまいました。余った布団をどうにかしたいと考えています。

【ポイント】

・ネットワークビジネスは連鎖販売取引にあたる

【解決方法】

ネットワークビジネス,マルチ商法といった商法は,特定商取引法の連鎖販売取引に該当します。

連鎖販売取引というのは大きく分けると①再販売型,②受託販売型,③販売あっせん型,④同種役務の提供型,⑤同種役務の提供のあっせん型,の5つに分類されます。

典型的な①を大雑把に説明すると,ボス(統括者)がいて,その下に中ボス(代理店),小ボス(小売店),客という構造があり,統括者は,代理店に「この商品を売ったら代金の30%をマージンにするからこの商品を買え」と命じ,代理店は小売店に「商品を売ったら代金の10%をマージンにするから商品を買え」と命じ,小売店はさらに商品を客に販売するというシステムで,小売店が商品を売ると,代理店,統括者が儲かるシステムになっています。上に行けばいくほどマージンは大きくなります。

とはいえ,小売店が勧誘できる人には限りがありますので,無限に組織が大きくなるわけではありません。よく似たのにねずみ講がありますが,ねずみ講は商品の販売をしないため直ぐに破綻するため禁じられています。連鎖販売取引では一応商品や役務の提供をするので,規制をしながら行わせようという態度になっています。

ただ,連鎖販売取引は仕組みが複雑な上,説明会などで利益を強調して勧誘することが多く,冷静な判断ができずに取引に入る人が非常に多いのが特徴です。

そこで特定商取引法では,事業者に,契約締結前に「概要書面」,契約締結後に「契約書面」を交付するよう義務付けており,原則として契約書面交付から20日以内であればクーリング・オフができると定めています。

さらに,これらの書面は,統括者と代理店,代理店と小売店,小売店と客の間の取引ごとに交付するように義務付けられています。

事例の案件では,Jさんが代理店から契約書面の交付を受けて20日以内であればクーリング・オフができますし,そもそも概要書面,契約書面のいずれかを受領していなければ,いつまでもクーリング・オフを主張して,代金の返還と布団の引取りを求めることができます。

3 育毛剤のキャッチセールス

【事例】

普段から薄毛に悩んでいた大学生のKさんは,路上できれいな女性から声を掛けられて植毛事業者の事務所に行き,頭髪の手入れなどについてアドバイスを受けました。育毛剤や専用のシャンプーを購入することになりましたが,総額は30万円でした。Kさんはアルバイトもしていないので,自分にはそんな大金が無いことを告げると,担当者から「そういう方にはクレジットが使えます。」「職業は家庭教師と記入して,年収は150万円と記入して下されば大丈夫です。」などと言われたことから,その通りにクレジット契約書に記載し,総額35万円のローンを組むことになりました。しかし,効果も無いうえ,K君はローンの支払いができなくなってしまいました。

【ポイント】

・キャッチセールスの場合はどうなるのか

・使用途中の育毛剤やシャンプーはどうなるのか

・偽ってクレジット契約を申し込んだ場合は

【解決方法】

いわゆるキャッチセールスについては,「訪問販売」に含まれると理解されています。

そのため,事業者は,申込時には「申込書面」,契約時には「契約書面」を交付しなければなりません。

事例の案件では,書面交付が明らかではありませんが,省令の記載事項をすべて満たす「契約書面」などが交付されてる場合であれば,書面交付から8日以内,書面が交付されていなければいつでも,クーリング・オフができます。

問題は,費消した商品の分についても代金の返還を求めることができるかということになりますが,政令指定された「消耗品」についてを使用した場合には,その使用した部分についてはクーリング・オフができないと解釈されています。したがって,既に費消した分や開封済みの分についてはクーリング・オフができないので,代金の返還を求めることはできません。ただし,誘導開封といって,従業員に「早く開けて使って下さい」などと言われて必要がないのに開けてしまった場合については,この部分についてもクーリング・オフが可能です。

また,クレジット業者と交渉をする際には,「嘘を書くことを勧められた」「加盟店を指導するように」と支払を拒むと,販売業者の方から慌てて連絡が来ることもあります。

クレジット業者を巻き込んで話を進めた方が解決が早くなる場合もあります。

第5 終わりに

今日お話ししたことが全ての悪徳商法ではありません。

ただ,多くの事案が静岡で実際に起きている事案です。

全ての事案を覚えて対応方法を覚える必要はありません。困った時には弁護士や消費生活センターに相談するという事を覚えておいて頂ければと思います。

また,今日,聞いた話の一部でも,家族に話すなどしてみて下さい。消費者被害の防止にはこのような地道な活動も大事なのです。

ご清聴ありがとうございました。

 

以上

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