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賢者の知恵に学びたい!

2015年6月17日

所 長  大橋昭夫

安全保障関連法案について

現在、国会に上程されている戦争法とも言うべき安全保障関連法案についての憲法学者の見解に、政府は批判を強めています。

自分の党が推薦した学者が、自己に都合の悪いことを述べたら、一転して「人選が間違っていた。」「学者に政治はわからない。」などと失礼なことを言っています。

批判されている長谷部恭男早稲田大学教授は、東京大学法学部教授を務めた高名な憲法学者ですが、6月4日の衆議院憲法審査会では、「集団的自衛権の行使が許されるという内容の法案は憲法違反であり、又、どこまで武力行使が許されるかも不明確で立憲主義にもとる。」と、ごくあたりまえのことを述べ、立憲主義を擁護したにしか過ぎません。

長谷部教授よりも前に憲法審査会への参加を要請されたとする佐藤幸治京都大学名誉教授は、6月6日に東京大学で開催された立憲デモクラシーの会主催のシンポジウム「立憲主義の危機」で講演し、京都帝国大学の佐々木惣一教授の「立憲非立憲」の著書を引用して立憲主義を擁護したとのことです。

京都帝国大学の佐々木惣一教授の名があらわれると私は東京帝国大学の美濃部達吉教授を思い出さずにはいられません。

 

立憲主義擁護派の憲法学者

 

この明治生まれの東西を代表する2人の学者は戦前の立憲主義擁護の双璧です。

多くの心ある国民や学者から思想の自由や学問の自由を奪った戦前の大日本帝国憲法を擁護することなど、今の国民には不可解ですが、2人の学者やそれに連なる学者には立憲主義の意義が十分に理解されていたのです。

立憲主義とは、憲法によって、時の権力者を縛り、政府の自由勝手に政権行使をさせないということですが、それは結局のところ、国民の人権が保障されるということで、ここが一番重要なところです。

今、私の手許に昭和10年に有斐閣から発刊された美濃部達吉著の改訂第五版「憲法撮要」がありますが、美濃部は大日本帝国憲法でわずかに認められた「臣民の権利」について、「近代立憲主義の最も貴重なる原則の1つは、各人の人格を尊重し、その自由及び財産の安全を保障することにあり、この目的のために、列国の憲法は米国諸邦の憲法及び仏国の人権宣言以来の例を逐い、概ね臣民の権利を保障して、国家の権力をもってもある限度を超えて、これを、侵すこと無からんことを定む。わが憲法第二章の規定も、亦、これとその主義を同じくするものにして、ただこれに、臣民の義務に関する規定をも加えたるものなり。」(177ページ)と述べており、さらに、「本章の規定をもって、臣民のすべての権利義務を総括して規定せるものとなすべからず。もし臣民の国家に対する権利義務がこれのみに止まるものとなさば、誤り、これより甚しきはなし。憲法は決して臣民の権利義務をこれらの列記事項に限定せんとするものに非ずして、ただその主要なるものを例示せるのみ、限定的列記に非ずして例示的規定なり。」(177ページ、178ページ)と喝破しています。

このように大日本帝国憲法の臣民の権利を自由主義的に解釈する美濃部ですから、当然な如く、大日本帝国憲法に規定されている天皇主権も制限して解釈することになり、有名な天皇機関説に到達せざるを得ないのです。

この考えが大正デモクラシーを経験したわが国の昭和初期の初めの通説だったのですが、やがて、軍国主義が強まり、日中戦争が開始される中で、軍部や一部の国会議員、蓑田胸喜らの狂信的な国家主義の学者によって美濃部攻撃が始まり、憲法撮要の著書などは出版法違反だとされて発禁処分となってしまうのです。

その中で、良心的な人こそ黙らざるを得なかったのです。あとは言わずと知れたアジア・太平洋戦争への道です。

 

いま、賢者の知恵に思いを至らすとき

 

私たちは、今、戦前の歴史に学び、明治生まれの美濃部達吉や佐々木惣一などの賢者の知恵に想いを至すべきだと思います。

美濃部達吉につながる長谷部教授や、佐々木惣一につながる佐藤名誉教授が立憲主義を説くのも国民の人権が制限されることや、人権侵害の最たるものである戦争を憂慮しているからではないでしょうか。

国民代表者だけではなく、彼らを選任したすべての国民が冷静に考え、日本の行く末を深く考える必要があると思います。

安倍政権が砂川判決を持ち出して、集団的自衛権容認の根拠とすることは、少しでも判例を学んだ身からすると、いかにも浅薄に映ります。

ここは、戦争放棄の日本国憲法をもっと大切にし、9条の精神を真剣に考えることが、先人の英知を尊重することになります。

私たちは、長谷部教授らが述べたことに謙虚であるべきだと思います。

それが日本の真の平和と安全保障につながるものであると思うからです。

 

所長のホームページ閲覧者の方々に対する心からの呼びかけを述べさせていただくことにしました。

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