公益通報者保護法の内容と課題

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公益通報者保護法という内部告発者を保護する法律が2006年4月 1日から施行されています。
この法律の問題点と今後の利用方法について、当所所長弁護士大橋昭夫が2006年4月15日(土)に静岡市内の産業経済会館で開催された静岡オンブズパーソンの講演会で講演していますので当日、配布され た講演要旨を掲載します。

                                        講師:大橋 昭夫
                                        所属:鷹匠法律事務所 
                                              所長弁護士
                                        静岡大学法科大学院 教授 

1.公益通報とは
2.公益通報者保護法制定の背景
3.公益通報者保護法の内容
4.公益通報保護法の限界

1. 公益通報とは何か

(1)企業や組織の内部で公益に係る違法行為や不当あるいは不正な行為が行われていることを、内部にいる人が、企業や組織のトップ、あるいは行政機関、マスコミや消費者団体などの外部へ通報することを広く「公益通報」という。「内部告発」という言葉の方がわかりやすい。(トナミ運輸事件参照)

(2)公益通報により、2000年6月、三菱自動車工業のクレーム情報隠し、リコール隠しが発覚、2001年12月、東京女子医大の心臓手術ミスを隠す為のカルテの改ざんが発覚、2001年、雪印食品の在庫輸入肉を国産肉と偽装して国に買いあげさせたことについて、詐欺が発覚。

(3)公益通報は日本の社会の透明性を高め、公正な社会を実現する為に不可欠な制度
 

2.公益通報者保護法制定の背景

(1) 2002年6月、消費者保護基本法の改正が審議される中で、新たな消費者政策の実効性確保の制度として、その制定が審議されることになった。


(2)国民生活審議会の審議では、消費者側と事業者側との意見が対立し、2004年3月に閣議決定された公益通報者保護法案では、保護の対象や要件が限定され、公益の保護の観点からも、通報者保護の観点からも後退したものと なった。


(3) 以上のことから法6条に「本法による保護は一般法理による保護を制限するものではない。」との解釈規定が入った。
 

3.公益通報者保護法の内容

(1)公益通報者保護法の目的(1条) 

本法は「公益通報」に関する解雇の無効等の民事ルールを定めるとともに 事業者の法令遵守を目的としたものであって、「公益」一般の擁護は直接の目的となっていない。

⇒公益の擁護の為の情報の開示を目的としたイギリスの「公益情報開示法」は、公益のための情報開示が促進されるよう、事業者の利益と通報者の保護とのバランスが留意され、通報者の保護も厚い。

これと比較すると、本法は、公益通報を狭く定義し、かつ、通報者、通報先、通報先ごとの保護の要件も限定したため、極めて不十分。

⇒解雇の効力程度や不利益取扱い禁止程度では、すでに解雇等を無効とする判決も多いし、労基法18条の2には「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上、相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする。」と規定されている。

⇒本法は、一般法ではなく、公益通報をした労働者を保護する為の1つの法律にしか過ぎない。


(2) 公益通報の定義(第2条第1項)

「公益通報」は、
①労働者が、
②不正の目的でなく、
③通報対象事実(指定法律に定める犯罪行為及び犯罪行為につながる規制違反行為、417の法律)が生じ、またはまさに生じようとしている旨を、
④労務提供先もしくは当該労務提供先があらかじめ定めた者(内部通報)、当該通報対象事実について処分権限を有する行政機関(行政通報)、
通報対象事実の発生もしくはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められた者(マスコミ通報などの外部通報)に通報したこととされており、その保護要件は通報先ごとに3条で規定されている。


(3)通報対象ごとの保護要件

①内部通報(3条1号)
⇒労務提供先等に対する内部通報は、「通報対象 事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料」すればでき、誤解であっても許される。但し、不正の利益等を得る目的があってはならない。

②行政機関通報(3条2号)
⇒「通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合」に限られ、思うだけでは駄目。真実相当性が必要で、たとえ間違っていたとしても信じたことについて合理的な理由がなければならない。
⇒これを欠くと労働者は使用者から処分されることになる。

③外部通報(3条3号)
⇒「通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当な理由」は行政通報と同じだが、これに次の要件が附加されている。

ア. 解雇、不利益な取扱い等のおそれ
内部通報あるいは行政機関通報すれば、解雇その他不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合

イ. 証拠隠滅等のおそれ
内部通報をすれば、「当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合」は外部通報は保護対象

ウ. 公益通報しないことの要求
「労務提供先から前二号に定める公益通報(内部通報、行政機関通報)をしないことを正当な理由がなくて要求された場合」外部通報は保護対象 となる。お金で買収すること、通報しないよう脅迫することはこの条文にぴったり。

エ.調査怠慢書面やメール、ファックスなどにより内部通報をしたが、20日が経っ ても調査行う旨の通知がないか、正当な理由がなくて調査を行わない場合には外部通報が保護対象

オ.生命、身体への危害の発生
「個人の生命又は身体に危害が発生し、又は発生する急迫した危険が あると信ずるに足りる相当な理由がある場合」には、外部通報は保護対象となる。


(4) 労働者派遣契約の解除の無効(4条)


(5)公益通報者に対する降格、減給等の不利益取扱いの禁止(5条)(6)本法による保護以外に他の一般法理による保護もあることを示した(6条)
 

4. 公益通報保護法の限界

(1)所得税法等の税法や政治資金規正法は、本法の対象となっていない。⇒脱税 や政治資金規正法違反は公益に反するものであるが、政府は、「専ら国家の機能に係る法律」だから外したという説明をしている。
⇒内部告発がもっとも威力を発揮する巨額の脱税や政治家に対する巨額な違法献金に関する通報は「公益」通報ではない。


(2)内部通報へ誘導されており、行政機関通報、外部通報は制限されている。


(3)外部通報先が整備されていない。本法の2条1項(勤務先の会社の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある者でないこと)、3条3号(違法行為の発生またはこれによる被害の拡大を防止する為に必要であると認められる者であること)が外部通報における適切な通報先であるとされている。

競争会社やブラックジャーナリズム等は除外されるが、労働組合、消費者団体、環境保護団体、公益通報支援団体、国会議員、マスコミ、オンブズパーソンは被害の発生、拡大を防止する役割を果たすものと考えられる。しかし、未だ適切な通報先は整備されていない。


(4)しかし、限界があっても、この法律を活用する姿勢も必要 

 
 
 


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