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提訴にあたっての所感

提訴にあたっての所感

中部電力浜岡原発の運転永久停止を求めて提訴

浜岡原発運転永久停止駿遠弁護団
主任弁護士 大橋昭夫

このたび、浜岡原子力発電所の30キロメートル圏内に居住している御前崎市民ら126名が、「浜岡原発永久停止小笠・掛川原告団」(第1次訴訟)、「浜岡原発永久停止志太・榛原原告団」(第2次訴訟)、「浜岡原発永久停止中遠原告団」(第3次訴訟)を結成し、中部電力を被告として、「中部電力は、浜岡原発に設置してある3号機ないし5号機の原子炉を、今後、永久に運転してはならない。」、すなわち、浜岡原発の廃炉を求めて、静岡地方裁判所浜松支部に訴訟を提起しましたので報告します。(1号機、2号機につきましては、老朽化のため既に運転を終了し、中部電力は廃炉にすると述べています。)

 浜岡原発については、既に、2003年に静岡地方裁判所に運転差止めの訴訟が提起され、1審では敗訴し、現在は、東京高等裁判所に係属中です。

 浜岡原発永久停止の今回の訴訟は、第2陣ということになりますが、浜岡原発の運転により、命と暮らしに大きな被害を被る周辺の住民多数が原告となったことに特徴があります。
 御前崎市内で浜岡原発に異議を唱えると、必ず、第三者から、「浜岡原発が嫌だったらよそで暮らしたらどうか。」などという愚劣な圧力がかかり、浜岡原発の危険性が市民の共通認識になりえない現状がありました。

 私は、数年前から、元国鉄労働者であり、現在御前崎市会議員を務めている清水澄夫氏から要請され、御前崎市佐倉で月1回、開催される無料法律・生活相談に出かけていました。

 その中で、清水氏が、市議会における16名の議員の内の唯一の「脱原発議員」として、浜岡原発の危険性を唱え、さらに御前崎市の予算の大半を占める「電源立地促進対策交付金」が、いわゆる箱物の建設費に使われ、市民の福祉、生活の向上に役立っていないことを主張するが、市長や他の議員からは一顧だにされていないことを知り、深い憂慮の念を禁じえませんでした。

 このような中で、2010年9月26日には、掛川市において、「浜岡原発の即時運転停止を求める全国交流集会」が開催され、私も清水氏共々、浜岡原発を何とかしなければならないとの思いに駆られていました。

 そこに3月11日の東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の惨状を目のあたりにして、清水氏らが地域住民をまとめ、強大な中部電力を相手として訴訟を提起するに至りました。

 既にマスコミの報道でご承知のことと思いますが、浜岡原発は、文部科学省の地震調査研究推進本部の想定により、2008年1月1日を算定基準とし、30年以内に87%の確率で発生すると予測されている東海大地震(マグニチュード8.0ないし8.4)の震源域の真上に立地する世界で最も危険な原発です。

 浜岡原発の周囲8キロメートル以内には8本以上の地震を引き起こす活断層があり、敷地内にも4本の断層が存在し、しかも、地盤は耐震性の低い岩盤である軟岩だと言われています。今のところ、東海大地震は、ユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが潜り込む駿河トラフ(駿河湾から遠州灘にかけての海溝でプレート境界)で発生すると考えられていますが、陸上での直下型地震ということも十分予測され、大津波が来る前に浜岡原発の原子炉は破壊され炉心溶融(メルトダウン)に至る事態も考えられます。

 2009年8月11日早朝に発生した駿河湾地震は東海大地震ではないかと私たち静岡市民を驚かせましたが、静岡市から50キロメートル位離れた浜岡原発でも5号機は大きく揺さぶられ、タービン建屋にひび割れが発生し、地盤沈下もみられ、運転を停止しました。東海大地震は駿河湾地震の何百倍の破壊力があると言われており、浜岡原発は地震や津波によりひとたまりもないものと思われます。

 過去、浜岡原発のある佐倉海岸では、「永長の地震」(1096年12月11日、マグニチュード8.0から8.5)、「明応の地震」(1498年9月11日、マグニチュード8.2から8.4)、「慶長の地震」(1605年2月3日、マグニチュード7.9)、「宝永の地震」(1707年10月28日、マグニチュード8.6)、「安政東海地震」(1854年12月23日、マグニチュード8.4)と5つの大地震が発生し、土地が隆起し、周辺の町では地震動や津波により大きな被害が出ていることが、史料地震学者の研究によって明らかにされています。

 今回の東京電力福島第一原子力発電所の事故は、私たちに原発の安全神話の空虚さと、原発を世界有数の地震国で津波国でもある日本に集中立地することが、市民の命と暮らしにとって許しがたいものであることを認識させましたが、同時に莫大な量の放射性物質を原子炉内部に閉じ込めておく技術が未完成であることを十分に認識させました。

 このことは、浜岡原発の場合でも同様で、放射性物質の一般環境への放散の危険性を考えると、たとえ、電気が有用物であるとしても、原発が私たちの生活と両立しえない敵対的な関係にあり、最早、共存できないことは明らかです。

 元来、軽水炉は、アメリカが、原潜用原子炉を原発に利用したという歴史的事情もあり、冷却水がなくなると炉心が制御不能になり、放射性物質を一般環境に放散するという構造的欠陥があると、かねてから指摘されています。

 私たちの訴訟では、このような危険な原子炉の運転の永久停止を、日本国憲法前文の平和的生存権、日本国憲法13条、25条で保障されている環境権、人格権を根拠にして請求しています。

 国際司法裁判所の元裁判官であり、国際反核法律家協会のウィーラマントリ会長は、原子力発電所の存続拡散は、将来世代への犯罪であり、人道法、国際法、持続的発展に関する国際法のあらゆる原則に違反するものだとして、「原子炉の便益を一方的に宣伝する情報の流れは逆転されねばならない。」、「時間は尽きようとしている。どうか今、行動して欲しい。」と述べ、東京電力福島第一原子力発電所の事故を契機とする意見を公開書簡という形をとって日本を含む世界の環境大臣に送付しています。

 この訴訟を担当する「浜岡原発永久停止駿遠弁護団」(団長田代博之弁護士)はウィーラマントリ氏の提言を忠実に受け止め、市民の皆様方と連携し、裁判官を説得し、安全論争、技術論争でも中部電力を凌駕すべく奮闘したいと思います。

 なお、その後、静岡県弁護士会の弁護士有志が一部原告となった訴訟が静岡地方裁判所に提起されましたので、浜岡原発を巡る訴訟は3つとなります。

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